東京2020オリンピックの聖火リレーが本庄市・深谷市区間で実施されました。特別走行方法として、一部区間を”世界最古の自転車”と言われる『陸船車(りくせんしゃ)』と自転車で走行しました。

 

 

(戸谷八前にて)

※聖火ランナーは第3走者の佐藤恋二郎さん

 

 

※聖火引継ぎのシーン(第2走者の横田茂男さんから第3走者の佐藤恋二郎さんへ)

 

 

◆東京2020オリンピック聖火リレー

2021年7月8日(木) 埼玉県3日目【本庄市・深谷市】区間

 


埼玉県で、2021年7月6日(火)~7月8日(木)の3日間にわたって、東京2020オリンピック聖火リレーが行われました。

 

 

1日目/7月6日(火)

川口市→蕨市・戸田市→戸田市→和光市・朝霞市・新座市→日高市→狭山市→富士見市・三芳町・ふじみ野市→所沢市

 

2日目/7月7日(水)

草加市→八潮市・三郷市→吉川市・越谷市→秩父市・皆野町・長瀞町→春日部市→杉戸町・宮代町→久喜市・加須市→行田市→熊谷市

 

3日目/7月8日(木)

川越市→鶴ヶ島市・坂戸市→本庄市・深谷市→嵐山町・東松山市・滑川町→鴻巣市・北本市→桶川市・上尾市→さいたま市

 

※全国の聖火リレーのスケジュール(ルートと日程)については「Tokyo 2020ホームページ(ルート)」へ

※デイリーハイライト動画については「Tokyo 2020ホームページ(ギャラリー)」へ

 


 

3日目となる2021年7月8日(木)には、【本庄市・深谷市】区間の聖火リレーが行われました。

※沿道では、密な状態にならないように新型コロナウィルス感染症対策が徹底されていました。

 

本庄市は自転車発祥の地(自転車機能の発明の地)です。そのことにちなんで、【本庄市・深谷市】区間スタート地点の『はにぽんプラザ(本庄市)』では、第一走者のLVF(ロービジョンフットサル)プレーヤーの岩田朋之さんが、世界最古の自転車と言われる足踏み式自走4輪車『陸船車(りくせんしゃ)』に乗って走行されました。岩田さんは、本庄出身の盲目の国学者 塙保己一翁の”世のため、後のため”という言葉を心の支えとしてこられたとのことです。

また、第11走者の新井正人さんが御堂坂付近から国の登録有形文化財である滝岡橋を通って道の駅おかべまで自転車で走行されました。新井さんは、「本庄まちNET」のメンバーとともに10年以上かけて、『陸船車(りくせんしゃ)』の実物大を復元されました。

続いて、第12走者の小澤 望さんが道の駅おかべ~滝澤酒造さま手前までの区間を自転車で走行され、【本庄市・深谷市】区間の最終ランナーとして「深谷ねぎまつり」の初代実行委員長の栗原 統さんが、深谷駅北口へとゴールされました。

 

 

 

◆出発日時・場所

令和3年7月8日(木曜日) 午前11時10分はにぽんプラザ(市民活動交流センター)出発

 

◆到着日時・場所

令和3年7月8日(木曜日) 午後1時7分深谷駅北口到着

 

◆ルート

本区間は、「はにぽんプラザ」より第一走者がスタートし、中山道を走行「道の駅おかべ」で深谷市の走者へ聖火を引き継ぐルートとなり、一部区間に、特別走行方法として「陸船車」や自転車で聖火を運びました。

(※本庄市のコースは、はにぽんプラザをスタートし、中山道を東に進み市街地を抜け、藤田地区を通って滝岡橋まででした。)

 

 

東京2020オリンピック聖火リレー 埼玉県3日目【本庄市・深谷市】区間
東京2020オリンピック聖火リレー 埼玉県3日目【本庄市・深谷市】区間

◆聖火ランナー(本庄市・深谷市)2021年7月8日(木)

NHKホームページ「東京2020オリンピック・聖火リレー埼玉県HP「埼玉で開催!Tokyo 2020を参照

 

【本庄市】

岩田 朋之 さん(Tomoyuki Iwata)※はにぽんプラザ・『陸船車』でスタート

横田 茂男 さん(Shigeo Yokota)

佐藤 恋二郎 さん(Renjiro Sato)

綿貫 恵美 さん(Emi Watanuki)

Lewis Aron さん(Aron Lewis)

若狭 昭次 さん(Akitsugu Wakasa)

長久 聖 さん(Sei Nagahisa)

一刈 昌太 さん(Shota Ichikari)

越智 博文 さん(Hirofumi Ochi)

田中 潔 さん(Kiyoshi Tanaka)

新井 正人 さん(Masato Arai)※途中から自転車で走行(道の駅おかべまで)

 

【深谷市】

小澤 望 さん(Nozomi Ozawa)※道の駅おかべから自転車で走行

小林 健作 さん(Kensaku Kobayashi)

出口 芳子 さん(Yoshiko Deguchi)

穐山 昇 さん(Noboru Akiyama)

大谷 隆男 さん(Takao Otani)

小林 正伸 さん(Masanobu Kobayashi)

栗原 統 さん(Osamu Kurihara)※深谷駅北口ゴール

 

 

 

■本庄市長よりトーチへ聖火の点火

吉田信解本庄市長より、第一走者の岩田さんのトーチへ聖火の点火 ※本庄ケーブルテレビ様7月8日(木)放送より

 

 

はにぽんプラザで第一走者としてスタートされた岩田さんと第二走者の横田さん。

 

御堂坂付近から国の登録有形文化財である滝岡橋を通って道の駅おかべまで自転車で走行された新井さん。道の駅おかべからは小澤さんが自転車に乗って聖火を引継がれました。最終ランナーの栗原さんは、深谷駅北口へゴールされました。

※NHKホームページ「東京2020オリンピック・聖火リレーライブストリーミング(本庄市・深谷市)」より

 

 

 


◆昭和15年(1940年)・幻の東京オリンピック

~オリンピック自転車競技コースの折り返し地点本庄市」~

 

昭和15年(1940年)東京オリンピックのポスター(増田一裕氏模写) ※『本庄地元学だより』(増田未来望著)P17より
昭和15年(1940年)東京オリンピックのポスター(増田一裕氏模写) ※『本庄地元学だより』(増田未来望著)P17より

 

昭和15年(1940年)の第12回オリンピックは、東京で開催される予定でした。

自転車競技は『東京から本庄で折り返す中山道ルート』で内定していました。

しかしながら、戦局の中で昭和13年7月に辞退され、”まぼろしのオリンピック”となってしまいました。

 

上記の『まぼろしのオリンピックポスター』は、増田一裕氏の模写によるものです。

そこに描かれている埴輪は、埼玉県熊谷市上中条出土の「甲冑武人埴輪(国重文)」とのことです。

「本庄地元学だより第4号 世界最古の自転車陸船車・その後ー本庄における近代自転車に関する動向ー」『本庄地元学だより』(増田未来望著)P17より

 

 

◆昭和39年(1964年)東京オリンピック時の聖火ランナー

(戸谷八商店前にて)

中山道は、1964年の東京オリンピックのときの聖火リレーのコースでした。

 

 


陸船車(りくせんしゃ)とは

~世界最古の自転車と言われる足踏み式自走4輪車~

増田一裕氏による「陸船車」10分の1模型
増田一裕氏による「陸船車」10分の1模型

 

 

◆将軍徳川吉宗に献上された「門弥式陸船車」

 

陸船車は江戸時代に武蔵野国児玉郡北堀村(現、本庄市北堀)で発明された乗り物です。

発明したのは、当時からくり作り名人として有名だったという庄田門弥(しょうだもんや)という村役人です。

陸船車は、享保14年(1729年)将軍徳川吉宗に献上されました。

 

 

◆自転車発祥の地・本庄市

 ~本庄で130年前に発明されていた「門弥式陸船車」~

 

現代につながる世界最古の自転車は、「ミショー型」自転車とされてきました。「ミショー型」とは、フランスのピエール・ミショーが1861年以降に考案し、量産化した自転車です。

2008年に本庄市立資料館の館長を努めていた増田一裕氏(本庄まちNETアドバイザー)が「陸船車」に関する論文を書いて、「門弥式陸船車」が世界最古のの自転車機能の発明品であることをつきとめられました。 

 

 

◆3台の陸船車

3台の陸船車 (増田一裕氏「「いわゆる『陸船車』の歴史的考察ー門弥の陸船車復元を中心としてー」『資料館研究紀要第4号(本庄市立歴史民俗資料館 2008』、表紙より)
3台の陸船車 (増田一裕氏「「いわゆる『陸船車』の歴史的考察ー門弥の陸船車復元を中心としてー」『資料館研究紀要第4号(本庄市立歴史民俗資料館 2008』、表紙より)

 

 

『庄田門弥の陸船車』に触発されて、享保年間、これを改造した“自転車”が2種類つくられました。 

『竹田からくり(芝居)の興行用 陸船車』と、彦根藩士平石久平次(ひらいしくへいじ)の陸船車』です。

 

 

3つの陸船車の関係性について、増田氏は述べられています。

「しかしまた、享保年間に発明・考案された3台の陸船車は、それぞれに世界最古の発明品として評価されるものである。すなわち、以下の結論に達する。

 

1、門弥式陸船車は、世界最古の自転車機能の発明品である。

2、竹田式陸船車は、世界最古の自転車、もしくは自動車(ロボット・カー)の模型である。

3、久平次式陸船車は、世界最古のクランクペダル式を採用した自転車機能の発明品である。

 

これらは、独自に発明・考案されたものではなく、互いに関連して製作され、享保年間という短期間ではあるものの、陸船車というわが国独自の技術的系譜を形成しており、技術史的に孤立した存在でないことが重要である。(中略)

なお、約270年以上も前に、現在の埼玉県本庄市北堀に生まれ育った門弥の発明品は、すぐに竹田からくりが改良して興行に供した。その竹田からくりの末裔である竹田縫殿之助(※宇野2007)は、奇しくも明治28年に本庄市本庄の本町の山車を建造しているのである。

「いわゆる『陸船車』の歴史的考察ー門弥の陸船車復元を中心としてー」『資料館研究紀要第4号(本庄市立歴史民俗資料館 2008』、P19より

※宇野小四郎2007 「『桐生の屋台からくり人形舞台』の日本のからくり人形における歴史的位置と意義について」 

 

 

◆「門弥式陸船車」絵図面

門弥式陸船車絵図面(増田一裕氏「「いわゆる『陸船車』の歴史的考察ー門弥の陸船車復元を中心としてー」『資料館研究紀要第4号(本庄市立歴史民俗資料館 2008』、P8より)
門弥式陸船車絵図面(増田一裕氏「「いわゆる『陸船車』の歴史的考察ー門弥の陸船車復元を中心としてー」『資料館研究紀要第4号(本庄市立歴史民俗資料館 2008』、P8より)

◆門弥の陸船車復元図

門弥式陸船車の推定復元図(増田一裕氏原図)※増田一裕氏(同上、P11)より
門弥式陸船車の推定復元図(増田一裕氏原図)※増田一裕氏(同上、P11)より

◆「本庄まちNET(代表:戸谷正夫氏)」の新井正人さんが実物大「陸船車」を復元

 

「本庄まちNET」はまちづくり活動を行っている市民グループです(代表:戸谷正夫氏)。

新井正人さんは、「本庄まちNET」のからくり門弥プロジェクトリーダーです。

このプロジェクトは、まちづくりの一環として13年前に始まりました。

新井さんは、「本庄まちNET」のアドバイザーである増田一裕氏の復元図と10分の1模型をもとに、2008年から2019年まで、10年以上の歳月をかけて世界最古と言われる自転車『陸船車』の実物大の復元に成功されました。 

 

2021年7月8日(木)には、聖火リレーのランナーとして、現代の自転車で聖火を運ばれました。

 

 

「本庄まちNET」の皆さん。第一走者 岩田朋之さんのサポートランナーを務められました。※はっぴを着ている方で前列の向かって一番右の方が代表の戸谷正夫氏です。
「本庄まちNET」の皆さん。第一走者 岩田朋之さんのサポートランナーを務められました。※はっぴを着ている方で前列の向かって一番右の方が代表の戸谷正夫氏です。
本庄まちNET からくり門弥プロジェクトリーダーの新井正人さん
本庄まちNET からくり門弥プロジェクトリーダーの新井正人さん

◆本庄レンガ倉庫に展示されている「陸船車」の模型

 

”「陸船車」は江戸時代の享保年間に武蔵国児玉郡北堀村(現在の本庄市北堀)で代々組頭を務めていた庄田門弥(しょうだもんや)が考案した乗り物です。

彦根藩士平石九平次の著した「新製陸船奔車之記」には、この門弥の発明した陸船車の図解が載せられており、車体は桐で造られ、黒く塗られていたようです。また、車体は船の形をしていて、車輪は4つあり、車体のほぼ中央に四角い箱が描かれており、この中に駆動用の装置が入っていたものと考えられています。この「陸船車」は、人力による自走式の乗り物であることから、「機能上、世界最古の自転車」と言われています。

本庄市でまちづくり活動を進めているグループ「本庄まちNET(代表 戸谷正夫氏)」が平成23年に実物大模型を復元させ、それをさらに改良したのが、この陸船車です。

1年延期になったオリンピック聖火リレーは、令和3年7月8日(木)に本庄市を通過します。はにぼんプラザをスタートし、中山道を東に進み市街地を抜け、藤田地区を通り滝岡橋までのコースです。

本庄市は自転車発祥の地ということで一部自転車での聖火リレーのほか、スタート地点のはにぼんプラザではこの陸船車で聖火を運びます。

聖火リレー当日、実際に走行する陸船車は、はにほんブラザにて展示中です。”(展示パネルより)

 

 

 

小雨の降る中でしたが、57年ぶりに”中山道”を聖火ランナーが走る姿を見られて、とても感動しました!!