釜江常好(かまえ つねよし)先生の『触覚本(しょっかくほん)マンガ塙保己一』について

※塙先生の偉業をより深く知ってもらうために、もともとのマンガの原作にはないエピソードを釜江先生の視点でいくつか追加されています。「六国史(仁徳天皇の話)」や、「記憶力と統合的に理解する力の話」、「令義解(りょうのぎげ)」等。その部分が入ったおかげで、より一層興味がふくらむ仕掛けになっております。

 

2021年2月15日放送のアメディア・オンエアー『マンガ塙保己一をご紹介』にZOOMで出演されている時の釜江常好先生
2021年2月15日放送のアメディア・オンエアー『マンガ塙保己一をご紹介』にZOOMで出演されている時の釜江常好先生

■インターネット番組「アメディア・オンエアー」のYouTube動画:https://youtu.be/1ZOMuMMcuN0

(2021年2月15日放送分・『マンガ塙保己一をご紹介』)

 

※お2人のお話の中では、慶應大学の村井純教授と一緒に釜江先生が日本での「草創期のインターネット」を根付かせた話等も出てきて、とても興味深かったです。

 

出典:一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター「インターネット 歴史の一幕: インターネット黎明期の名脇役 釜江常好先生」より

 

(2021年10月4日追記)

釜江先生と村井純氏のインターネット草創期について調べたら、上記のように釜江先生が村井純氏と並ぶほどの重要な役割を果たされていることがわかり驚きました。加えて、高エネルギー加速器研究機構の発足に際しても、目覚ましい貢献があったということを知りました。物理学における最重要分野である素粒子研究のための施設の立ち上げ、草創期のインターネットにおける立ち上げ等、一番重要な時期である「最初期の基本設計」に対する「卓越した発想と実現力」を持つ稀有な人物が釜江先生だと実感しました。視覚障害者に対する教材開発等に関しても、きっと釜江先生の方針に則って行えば素晴らしい方向に向かうものだと思います。塙保己一先生のような天才もきっとその先に生まれるのではないのでしょうか。  

 


◆『触覚本 マンガ塙保己一』

『触覚本 マンガ塙保己一』(原作:花井泰子 マンガ:しいやみつのり 触覚本:釜江常好 朗読:秋友範子)
『触覚本 マンガ塙保己一』(原作:花井泰子 マンガ:しいやみつのり 触覚本:釜江常好 朗読:秋友範子)

◆釜江常好(かまえ つねよし)先生

~故栗原亨氏の意志を受けて、視覚障害者のための教材の研究開発に尽力され続ける~

 

先日、釜江常好(かまえ つねよし)先生から『触覚本 マンガ塙保己一』をいただきました。

今年は、塙保己一翁没後200周年記念の年ということで、視覚障害者の方のために制作された触覚本を、できるだけ多くの方に知ってもらいたいとのことでした。先生は、すべての都道府県の図書館に、『触覚本 マンガ塙保己一』を寄贈されました。 

 

2019年に、教え子であり、ご友人でもあった栗原亨氏が事故で亡くなられてからは、栗原氏がよく話されていたという、『障害者には、この程度の教育で十分と考えないで』、『情報を、耳からだけで取るのは疲れる。触覚も活用すべきだ』というご意志を受け継ぎ、視覚障害者の方が学びを進められる教材開発に一層ご尽力されています。

 

・・・・・・・・・・・・・ 

釜江先生は、東京大学及びスタンフォード大学名誉教授であり、ユニバーサル・アクセスJPの代表を務められています。

Android系、Chromebook、JupyterNotebookなどを活用した、アクセスビリティの高いICT環境開発や、視覚障害者のためのPCやスマホを利用しての触覚と音声が統合された教材の開発に取り組まれています。

 

■釜江常好先生のプロフィールについては

■ユニバーサル・アクセスJPホームページ

 


◆原作『マンガ 塙保己一』について

 

『マンガ 塙保己一~目で聞き、耳で読んだ』(原作:花井泰子 マンガ:しいやみつのり、ストーク社)は、江戸時代に活躍した盲目の学者「塙保己一(はなわ ほきいち)先生」の生涯を描いている本です。

 

塙保己一先生は、子どもの病気で盲目となり、苦労に苦労を重ねながらも、よき師匠や多くの人たちに助けられて、『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』666冊の発刊や和学講談所の開設など、数々の功績を残されました。

漫画という媒体を通して、塙保己一先生の人生と、成し遂げられたことの大きさが、より実感を伴って理解することができます。

 

釜江先生は、ストーク社発行の『マンガ 塙保己一』の原作者である花井泰子氏とマンガ家、しいやみつのり氏にご承諾をいただき、触覚本としてこのご本を出版されました。

 

 


『触覚本』の使い方

◆スマホのアプリを使って『触覚本 マンガ塙保己一』の朗読を聞く

~【使い方①】触覚本にあるQRコードを読み込んで朗読の音声を聞きながら、点字や触覚図を指で見る仕組み~

 

※QRコードを読み取るときは、一般的なQRコードリーダアプリではなく『触覚本リーダ』アプリを使って読み取る。

 

【使い方①】 

1.Google Play→『ドキュメントトーカー』をインストールする。

(※「触覚本リーダ」を使用するには、「ドキュメントトーカー」アプリのインストールが必要)

2.Google Play→『触覚本リーダ』をインストールする。

3.『触覚本リーダ』アプリをタップする。

4.『触覚本リーダ』アプリの表紙の右下にある「カメラアイコン」をタップしてカメラを開く。

5.『触覚本リーダ』アプリのカメラを使って、印刷本『触覚本 マンガ塙保己一』の各ページの左上にある「QRコード」を読み込む。

6.そのページの文章が朗読される。

 

【詳しくは】

■ユニバーサル・アクセスJPのHP「朗読アプリをアンドロイドにインストール希望」 

・・・・・・・・・・・・・

<注意>QRコードは、Androidアプリでのみ読み取りできます。

(iOSはOSを改良することが難しいため、釜江先生は、OSの技術情報が公開されているAndroidに着目し、『触覚本リーダ』のアプリを開発されました。)

※詳細は、ユニバーサル・アクセスJPホームページ「アンドロイドベースのユニバーサル-アクセス(UA)携帯」の中の、「なぜアンドロイドを選ぶか」をご覧ください。

 


◆iPhoneやAndroid、パソコンを使ってWEBから朗読を聞く

~【使い方②】QRコードを読み取って音声出力されていた朗読が、WEBからも聞くことができる

 

【使い方②】

下記のWebサイトにおいても『触覚本 マンガ塙保己一』の朗読を聞くことができます。

朗読だけでなく、マンガ描画の、ちょんまげ・杖・耳・等に触れると。その部分が何か教えてくれる仕組みになっています。

■『触覚本 マンガ塙保己一』の朗読を聞くことができるWEBサイト

https://tactilereader.herokuapp.com

(※大きなフォルダーなので、少し時間がかかります。)

  

『触覚本 マンガ塙保己一』の朗読を聞くことができるWEBサイト
『触覚本 マンガ塙保己一』の朗読を聞くことができるWEBサイト

■上記「触覚本いろいろ」の中のSampleの一部

(グラフィック表示を読む音声付触読器)

 

生物「脳の感覚野と運動野の体部位対応」
生物「脳の感覚野と運動野の体部位対応」
関数「座標系と直線、放物線、双曲線」
関数「座標系と直線、放物線、双曲線」
地図「天体図」(渋川春海の天体図)
地図「天体図」(渋川春海の天体図)

「脳」、「座標系」、「天体図」等、主にサイエンスの分野が扱われています。

釜江先生は、『触覚本 マンガ塙保己一』を窓口にして、知的好奇心をくすぐる教材を広げていきたいと思っていらっしゃいます。

 


◆A4サイズのタッチスクリーンPCの上に『触覚本』をのせて、タッチしながら朗読を聞く

【使い方③・現在開発中】触覚本と同じA4サイズで、タッチスクリーンの付いたPCを使ってパワーポイントを開き、その画面の上に『触覚本』をのせてタッチすることにより、その部分の詳細な説明を聞くことができるという仕組み~ 

A4サイズのタッチスクリーンが付いたパソコン上に、触覚本のページをのせて、画面をタッチすることによって音声で説明を受けている時の写真
A4サイズのタッチスクリーンが付いたパソコン上に、触覚本のページをのせて、画面をタッチすることによって音声で説明を受けている時の写真

【使い方③】

1.「A4サイズ」で「タッチスクリーンが付いた」パソコンを準備する。

2.「パワーポイントのファイル」をダウンロードする。

(※パワーポイントに関しては、現在準備中のため下記までメールをくださいとのことです。

(Mail:tune.kamae@universal-access.jp))

「タッチスクリーン用パワーポイントのダウンロード」のページをご参照ください。

 

3.準備した「A4サイズ」で「タッチスクリーンが付いた」パソコンを使って、「パワーポイントのファイル」を開く。

4.『触覚本 マンガ塙保己一』の該当ページを「A4サイズ」の「タッチスクリーンパソコン」の上にのせる。

5.指先で、立体描画にタッチすると、タッチした部分が、コンピューターの音声によって説明される

 

(→この機能を応用すれば、生体や、細胞の構造、世界の文化遺産、銀河系や宇宙の構造、プログラミング等、幅広い高度な知識が得られるようになります。) 

 

【詳しくは】

■ユニバーサル・アクセスJP「音声付き、触覚本マンガ塙保己一」 

 


◆釜江先生の思い

■塙保己一先生の偉業を多くの視覚障害者の方たちにも知ってもらいたい

・「本当は、東京で、視覚障害者を含む多くの方々に、(塙保己一先生没後200周年記念事業に)出席いただき、没200年を祝いたかったです。

残念ながら、塙保己一の業績や生涯は、視覚障害者に、ほとんど知られていません。積極的に視覚障害者に働きかけ、保己一の仕事の意義を知ってもらいたいのです。」

 

・「米国の大学と長く関わった中で、視覚障害者が、社会で、幅広く活躍している見てきました。私が学位を得た、プリンストン大学でも、同じ頃に、全盲の学生が生物学を学んでいました。彼は、カリフォルニア大学の教授になり活躍しました。…ニュートンの先生も全盲でした。

(※上記インターネット動画の中で釜江先生は、プリンストン大学のこの全盲の学生について、彼は貝の分類学を専門にしていたのですが、ある時、「私にはわかるのに、どうして目の見える君たちにはこの違いがわからないの?」とその学生が話していたエピソードを紹介してくださいました。

このお話から、塙保己一先生の「目あきというものは、不自由なものだ」という逸話を思い出しました。

(和学講談所で『源氏物語』の講義をしているときに、風が吹いて、ろうそくの火が消えたことがありました。塙先生はそれとは知らず講義を続けていましたが、弟子たちがあわてたところ、塙先生が「目あきというのは不自由なものじゃ」と笑いながらつぶやいたという逸話です。)

目が見えないというハンディキャップを背負いながら、不屈の努力で自らの道を切り開いてこられたこの方のもつ意識のすごみに感動しました。

 

 ・「何とか、若い視覚障害者に、お送りした本(触覚本 マンガ塙保己一)を、届けたいのです。視覚障害者が読み聞きできる保己一に関する本は、他にありません。

塙保己一を生んだ本庄市から特別支援学校に、この本を寄贈してほしいいのです。ぜひ朗読を聞き、手で触り、点字と輪郭を読んでほしいのです。

 

・・・・・・・・・・・・・

■日本でも、晴眼者、視覚障害者、その他の障害をお持ちの方が共に議論しながら、支え合って、学習が進められる環境が育ってほしい

 

海外での教育経験も豊富な釜江先生は、日本では、欧米とは異なり、インクルーシブ教育(注1)が進んでいないことに違和感を覚えたと述べておられます。

 

・「晴眼者(視覚に障害のない人)、全盲の人、ディスレクシア(難読症)の人、発達障害の人、その人たちが同じ本を読んで、議論し合って、助け合って勉強していく、それの第一歩として作ったのが、『触覚本 マンガ塙保己一』です。」

※(注1)インクルーシブ教育とは、「障害のある子どもたちと、それ以外の子どもたちとを隔てて教育する」という概念を覆す教育方法。障害のある子どもも、ない子どもも、共に教育を受けることで、「共生社会」の実現を目指している。

 

・「私達は、障害者と晴眼者が、同じ教材が使い、共に、助け合いながら学ぶ環境を生み出したいのです。

すなわち、生徒や学生が、教える側に立つことで、利用する内容や、利用する情報技術を、より深く理解するようになります。支援を受ける側も、仲間から教われば、気軽に質問ができるでしょう。晴眼者用の教材を読んでもらうだけでは、なかなか理解が進みません。新しい形の本を使うことで現状が変わることを期待しているのです。

新しい形の本の、最初の例として、触覚、聴覚、視覚で読める、『触覚本 マンガ塙保己一』を出版しました。

 

・「音読付の触覚本では、大きな文字に点字が重なっている上、グラフや描画線が触覚や音声で読めるようになっています。大学や大学院レベルの知見を、簡単に得ることができる時代に入りつつあるのです。

 

【参照】

■ユニバーサル・アクセスJP「私達の目標」

■アメディア・オンエアー「マンガ 塙保己をご紹介」(2021年2月15日放送)

■毎日新聞「点字毎日 塙保己一の紹介漫画 音声付き触察本で」(2020年11月15日掲載)

 

 


◆今後の教材開発について

~音声付の『サイエンス触覚教材』を開発~

 

今後、釜江先生は、『サイエンス分野』においても、『触覚本 マンガ塙保己一』のような、”音声と触覚が統合された教材”の開発に取り組んでいかれたいとのことです。文章、グラフ、二次元分布図、生体、細胞の構造、写真などが音声で説明される『サイエンス触覚教材』です。 

 

近年認知科学で言われているのが、耳で聞くと同時に触覚を使うと、はるかに情報が脳に入りやすいということです。

 

認知科学的にも有効なこのような教材は、教育のあらゆる場(障害のある方もない方も)において活用できる、とても可能性に満ちた素材だと感じました。 

(※詳しくは「音声付きのサイエンス触覚教材」へ) 

 

 

【参照】

ユニバーサル・アクセスJP「音声付き、サイエンス触覚教材

ユニバーサル・アクセスJP 「今後の計画